孤独を小説世界観に表現したものは、数多く存在していますが、手に取り目を通したことのある方はどの程度いるでしょうか?
もしかしたら、意外にも少なかったりするのかもしれません。
しかし、孤独や一人を題材にした小説は心を打たれたり、共感できたり、ひいては孤独を和らげてくれるきっかけにもなったりします。
何よりも、その世界観や物語の展開に没頭してしまい時間が経つのも忘れてしまうことでしょう。
まさに、一人で過ごす時間をもて余しているぼっちさん、また秋の夜長などにはもってこいの時間の使い方だと思います。
また読書はとても良い習慣です。文字を読みその先の展開を想像し頭を働かせることは、脳の活性化にも繋がりますし、感受性にとっても非常に有効です。
言葉の選択肢が増えることは、大人として有益なことでもあります。言葉のボキャブラリーが多い相手と会話をしていると楽しいと感じる瞬間が多いと思います。しかし日常生活で活字に触れていたり、表現力の高い文章を目にしたりしていないと、なかなかボキャブラリーは発達しません。
おすすめの孤独や一人をテーマにした小説を10選と題して紹介していきますので、お気に入りの一冊を見つけて、活字デビューを果たしてみてはいかがでしょうか?
Contents
【孤独・一人をテーマにした小説】幽霊たち
「幽霊たち」は、ポール・オースター作で1986年に刊行されています。
「ガラスの街」や「鍵のかかった部屋」に並ぶニューヨーク三部作の第二作です。日本語版翻訳が新潮社より刊行されており、2011年には佐々木蔵之介主演によって舞台化もされています。
あらすじとして、とある探偵が男を監視して欲しいと依頼を受けることから始まります。
週に一度の報告義務と、必要が無くなるまでの監視継続以外には、主だった連絡は無く、男を監視する日々が続く探偵。
監視に監視を重ねて1年がたとうとしても、事件らしい事件も起こらないことから、実は監視されているのは自分なのではないかと疑念を抱く探偵。
監視対象の男が実は依頼主なのでは?と考えついに決心し、男の部屋に入る探偵。そこで探偵が見たものは?
といった具合に、あらすじだけでもどうなってしまうのか気になる内容ですよね。舞台化されるだけあり、引き込まれる展開になっています。
ドキドキしながら、読んで欲しい作品です。
【孤独・一人をテーマにした小説】金閣寺
「金閣寺」は、三島由紀夫の長編小説であり、代表作でもあります。文学に縁のない方でもタイトル位は聞いたことがあるのではないでしょうか?
近代日本文学を代表する傑作の一つとされ、海外でも非常に評価の高い作品です。
簡潔にあらすじを紹介すると、金閣寺の美しさに憑りつかれた一人の男が、金閣寺に火をつけるまでの経緯を、一人称告白の形で綴っていく物語です。
上記した、おおまかな主軸のあらすじのみを、知らない人が見れば興味をそそられる部部は少ないでしょう。
しかし、時代背景や人間の心理や観念が卓越した文体で綴られており、読み始めると引き込まれること間違いなしの作品です。
日本を代表する作家の三島由紀夫の作品を、手に取ったことがないのであれば、是非ともおすすめしたい作品となっています。
【孤独・一人をテーマにした小説】タイタンの妖女
「タイタンの妖女」は、1959年に出版されたカート・ヴォネガットのSF小説です。
世界観としては、SF小説ですので壮大なスケールで描かれており、自由意思や全知全能、人類の歴史全体の目的といった問題を扱った作品になっています。
作者のヴォネガットですが、某有名お笑い芸人も大ファンであることで知られています。
自身の所属する家族経営の事務所も、実はこのヴォネガット好きにちなんで名付けられたとか。
身近な世界観に留まらずに、大きなスケールで描かれる物語がSF小説の醍醐味ともいえるでしょう。
世話しなく過ぎる、ストレスだらけの現実世界をほんの少し離れて、このSFの世界観に身を投じてみるのも、素敵な時間になることでしょう。
【孤独・一人をテーマにした小説】老人と海
アーネスト・ヘミングウェイの短編小説である「老人と海」は、1951年に書かれて翌年の1952年に出版された世界的なベストセラーです。
1954年のノーベル文学賞受賞作ともされることもあり、タイトルである老人と海を知らなくてもヘミングウェイという名は誰もが聞いたことがあるでしょう。
老人と海というだけあって、老人と海が物語の大きなテーマになっています。
簡潔にあらすじを紹介すると、漁を営む老人が手伝いもなく、一人で漁に出ると大物を釣り上げます。
長時間格闘するのですが、大きすぎて船に獲物を捕獲することができません。
なんとか獲物を持って帰ろうとする老人ですが…といったストーリーです。
読み手によっては、この老人と海は「えっ?これで終わり?」といったところで終わりを迎えるのですが、この終わり方をどう捕らえるかは、ぼっちさん次第といったところ。
そこをどう考えるかで、この作品の面白みが変わってくるのだと思います。
【孤独・一人をテーマにした小説】漂流
「漂流」は吉村昭の長編小説で、1975年にサンケイ新聞で連載され、加筆訂正を加え翌年の1976年に新潮社から出版されました。
船の難破により伊豆諸島に漂着し、12年の無人島生活を過ごし、故郷に生還した土佐の船乗りの史実を基にした物語です。
この漂流は、史実を基にした物語であるので言ってしまえばリアリティーが半端ないのです。
ですから、お一人で孤独を感じている方であったら孤独感を助長してしまう瞬間もあるかもしれません。
しかし、人間の生きたいという本能や、自然の脅威など史実に基づいているからこそ描けるリアリティーに引き込まれ、没頭する時間へと変化していくことでしょう。
【孤独・一人をテーマにした小説】深夜特急
沢木耕太郎によって産経新聞に途中まで連載され、1986年に1、2巻が刊行され1992年に最終巻が刊行された、紀行小説が「深夜特急」です。
新潮文庫からは6冊に分冊される形で文庫本として出版されています。
「深夜特急」は、バックパッカーのバイブルとも言われています。
その訳は、インドのデリーからイギリスのロンドンまでをバスだけを使用して一人旅をするという主人公の物語であって、筆者の体験談に基づいていることにあります。
深夜特急を読んで、旅に出ようと決意し旅行客が増加したなんて話もある位です。
今の時代、海外旅行も身近なものになっていて行こうと思えば、すぐにでも行けてしまいます。次はどこに旅しようかと帰りながら考える贅沢な時間も持つことができます。
もし、お一人様で旅行を前向きに考えることが出来なくても、なんらかの一歩を踏み出すきっかけになってくれる。そんな作品ですので、きっかけ待ちのぼっちさんには是非おすすめしたい作品です。
【孤独・一人をテーマにした小説】オン・ザ・ロード
「オン・ザ・ロード」は、ジャック・ケルアックにより、自らの放浪体験を題材に書かれた自伝的内容の小説です。
1951年4月に3週間で書かれ、1957年にヴァイキングプレスから出版されました。日本では、1959年に最初に出版された際には「路上」というタイトルで、2007年の新訳版では「オン・ザ・ロード」というタイトルで出版されています。
孤独や一人でいることを題材としている本には、自らの体験や放浪、旅行を題材にしている作品が多い気がしますが、まさにこの「オン・ザ・ロード」はアメリカを放浪する体験記。
本当の自由の意味や、人間として生きるといった人としてのコアな部分を考えるきっかけになる作品であると思います。
この作品を読めば、フラっとどこかへ出かけたくなることでしょう。
その足が向かう先は一人であるあなた次第ですし、向かう先がどこであろうと自由なのですから。
【孤独・一人をテーマにした小説】孤独の価値
森博嗣によって描き出される作品が「孤独の価値」です。2014年に幻冬舎から出版されています。
タイトルから解るように「孤独」をテーマに執筆されているこの作品。
人は何故孤独を恐れるのか。その多くは孤独は寂しいからだという。しかしその寂しさは、どんな嫌なことをぼっちさんにもたらすだろうか。本当にそれは寂しさであり孤独なのだろうか。
その寂しいと思う気持ちや、孤独と感じる負の感情は、実は何かに作り出されたものなのではないか。
そんなことを考えさせられながら、自分の思い描く自由や生き、どこからくるのか解らない孤独感を、少しでも和らげることができる為の画期的な人生論が描かれているそんな作品です。
孤独を嫌う人、孤独を好む人。それは自由であり、どの気持ちも個性です。しかし孤独に苛まれ、寂しさを感じているのであれば、その価値や考え方を変化させるきっかけになるかもしれない、おすすめの作品となっています。
【孤独・一人をテーマにした小説】極上の孤独
「極上の孤独」は、下重暁子によって書かれ、2018年に幻冬舎から出版されている作品です。
元NHKのアナウンサーが描き出す「孤独」を考えるきっかけとなるこの作品。
「孤独」=「悪」という方程式が成り立ち、一般的にそれが当たり前だと浸透してしまっている現代ですが、本当に孤独は悪いことなのかということを深く考えてしまう内容となっています。
孤独だから周囲に溶け込むことが出来ない。周囲の人間に馴染むことが出来ないから孤独になる。一人で過ごし最後の瞬間まで一人。現代ではとても憐みの目を向けられることは必至でしょう。
しかし、一人でいることは本当に可哀想なことなのでしょうか。そもそも周囲の人に合わせて自分の色を無くしたまま生きる位であれば一人を選択する生き方も正解なのではないでしょうか。
そんな一人でいることや孤独ということの本当の意味を考えさせてくれる「極上の孤独」。
この作品を読んで自分にとっても「ぼっち」や「一人」でいることの意味を考えるのも楽しみかたの一つでしょう。
【孤独・一人をテーマにした小説】友だち幻想
「友だち幻想」は、筑摩書房の中高生向けのシリーズである「ちくまプリマー親書」から2008年3月に刊行された作品です。
中学生、高校生といえば人間関係で悩み、つまずきやすい歳頃ですよね。そんな多感な時期のティーンに向けて書いた実用社会学の内容となっています。
本書は、中学生や高校生に向けたものであるので、「友だち」というフレーズが沢山出てきますが、社会人にあてはめて読み進めることもできます。むしろ色々な立場に読み替えることが可能で、家族や恋人、職場関係など、自分と繋がる他者全てとの繋がりを考えることが出来るのです。
刊行当初は、中高生を中心に月間100冊程度の売れ行きでしたが、大人にあてはめて読んでも様々な関係性を円滑にできるヒントを得られるということで、2017年初頭から売り上げが上昇しています。
まさに、コミュニケーション障害、いわゆるコミュ障と自覚がある「ぼっち」さんには是非とも読んでみてほしい一冊です。
【まとめ】孤独をテーマにした小説10選!
いかがだったでしょうか。孤独をテーマにした小説10選と題して、おすすめの小説を紹介してきましたが、ここまで目を通しているお一人様であれば一冊位は興味をもった作品があったことでしょう。
秋の夜長を読書にふけり過ごすのもよし。
一人であるということに対して深く考えるきっかけにするも良いでしょう。「生きること」や「自分」ということを深く考えたり、理解しようとしたりする瞬間は、日常生活を普通に過ごしているだけでは、あまり訪れません。
これをきっかけに、自分さえ知らなかった自分を見つけたり、孤独を打破するきっかけにしたりと、読書する時間を有意義な時間にしてみてはいかかがでしょうか。

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